EU排出量取引制度(EU ETS)の管理

海運業界は2024年1月よりEU排出量取引制度(EU ETS)の対象となりました。私たちは、船主および用船者の皆様がEU ETSに関連するあらゆるコンプライアンス義務を確実に遂行できるよう、万全の体制でサポートいたします。

欧州連合(EU)が2022年に発表した海運業界の監視・報告・検証データセットである燃費消費実績報告制度(EU MRV)によると、CO2排出量は業界全体でやや減少していますが、前年比では顕著に変化しています。2024年1月1日に施行されたEU MRV規制は、5,000総トンを超える船舶に対して、EUおよびEEA内の港を発着する際のCO2排出量の報告を義務付けています。このデータは、EU排出量取引制度(ETS)に海運業界を含める目的で使用されます。

EU排出量取引制度(ETS)において、2024年に当社がサポートできる分野

当社の一連のサービスは、変化が激しいEU排出量取引制度(EU ETS)に対応できるよう、お客様ごとにオーダーメイドで提供されます。労力をかけずにコンプライアンスを維持して戦略的管理を開始できることが特徴です。持続可能なソリューションの最前線に立つ当社は、お客様のご期待に沿えるよう幅広いサービスを展開しています。データの取り扱いから、戦略的な事業ガイダンスまで、複雑なEU ETSを確実に乗り切るための強力なサポートをご利用いただけます。当社の中核的なサービスを以下にご紹介します。

検証済みデータの取り扱い
当社のサービスでは、排出量データが第三者の機関により検証されます。このデータは、お客様ごとにカスタマイズされた、Hecla排出量管理デジタルプラットフォームで安全に確認できます。

償却口座の管理
信頼性が高く、法令に準拠した償却口座の管理サービスを提供しています。あらゆる手続きをサポートするほか、EUAの取引の確実な履行を保証します。

排出枠の調達
複雑で変化の激しいことで知られる排出枠の取引市場を、お客様が継続的に利用できるようサポートします。

年次償却
検証されたMRV排出量と償却量の相違を防ぎ、法的なリスクや罰金を回避できるよう、年次償却プロセスを保護します。

コマーシャルアドバイス
ビジネスモデルに複雑なEU ETSを織り込み、コンプライアンスを確実に維持できるよう、商取引に関するアドバイスをそれぞれのお客様に合わせて提供します。

Hecla Emissions Management ASは、Wilhelmsen Groupの一角をなすWilhelmsen Ship Managementと、船会社Affinity Shipping LLPの合弁会社です。Heclaは、EU排出量取引制度(EU ETS)に関するコンプライアンスサービスを提供する、中立的かつ独立した企業として設立されました。

Heclaにより、ETSのバリューチェーンを単一のワークフローに集約し、デジタルプラットフォームで追跡することが可能になります。




Heclaのサービスについて、詳しくは公式サイト(https://www.hecla-em.com/)をご覧ください。

EU排出量取引制度(EU ETS)に関するFAQ

1. EU排出量取引制度とはどのような規則ですか?

排出量取引制度は、重工業や発電所から排出される温室効果ガスを削減して気候変動に対処するための、欧州委員会が定めた複雑な規則です。2024年1月1日からは海運にも適用されています。EU ETSは「キャップ&トレード」方式を採用しているため、許容される総排出量に上限が設定され、その範囲内で排出枠が配分・取引されることになります。企業は排出量を賄うだけの排出枠を保有しなければならず、排出量の多い企業は他社から排出枠を購入するか、排出量を削減する必要があります。

2. 船舶のETS管理を船舶管理会社に委託するメリットは何ですか?

EU ETS管理を船舶管理会社に委託することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 専門知識:船舶管理会社は専門チームを擁しており、EU ETS規制とベストプラクティスに関する深い見識を持っています。この専門知識によりコンプライアンスを確実に遵守し、コストを削減できます。
  • プロセスの合理化とリスクの軽減:船舶管理会社では、EU ETSコンプライアンスを管理するための体制と手順が確立されているため、エラーやコンプライアンス違反による罰則のリスクを軽減できます。
  • 効率化とコスト削減:外部に委託することで、社内のリソースを本来の業務に集中させることができます。船舶管理会社は規模の経済性を活用できるため、最終的には顧客にとっても費用を削減できる可能性があります。

3. EU ETSの管理に特化した、Heclaの排出量管理デジタルプラットフォームとは何ですか?

Heclaの排出量管理デジタルプラットフォームは、船主や用船業者のEU排出権取引制度(EU ETS)の支援を専門とするHecla Emissions Management社が開発した、特注のソフトウェアソリューションです。その特徴をご紹介します。

  • 目的:データの収集・検証・報告や、排出枠取引など、海運会社がEU ETSを遵守するための、あらゆるニーズを管理できます。
  • カスタマイズ:特定のニーズや要件に合わせて、お客様ごとにオーダーメイドされます。
  • セキュリティ:データはプライベートプラットフォーム上で安全に保管され、転送されます。
  • 機能:具体的な機能は未公開ですが、次のようなツールが含まれると考えられます。
    • 排出量のモニタリングと算出
    • コンプライアンス報告書の作成
    • EUA排出枠の管理と取引
    • リアルタイムのデータ可視化と分析
    • 利害関係者との連絡・連携

4. EU排出量取引制度は、どのような仕組みなのですか??

EUの排出量取引制度(ETS)は「キャップ&トレード」方式を採用しています。対象となる産業において、全体で許容される温室効果ガス(GHG)排出量が決まっており、これを切り分けたのが「排出枠」と呼ばれます。1つの排出枠は、1トンのCO 2 eq(二酸化炭素換算量)に相当します。

その仕組みは次のとおりです。

  • 上限排出枠:毎年の排出枠の総数(上限)は、EUにより厳格に決められています。全体の排出量を強制的に減少させるため、この上限は年々縮小されています。
  • 割当:排出枠は、発電所、工場、航空会社などの対象事業体に割り当てられます。無料で割り当てを受けられる場合もあれば、オークションでの落札が必要な場合もあります。
  • 取引:制度の中核は「取引」にあります。EUの炭素市場では、企業が排出枠を売買することができます。排出量を超過している企業は、多額の罰金を避けるために、排出量が少ない企業から余剰枠を購入できます。
  • コンプライアンス:対象事業者は、毎年末に、検証済みの排出量を賄える十分な量の排出枠を償却する必要があります。排出枠が不足している場合、多額の罰金が科せられます。.

5. EU ETS規制は誰が対象ですか?

EUの排出量取引制度(ETS)規制は、温室効果ガスを大量に排出している幅広い事業体を対象にしており、その範囲は年々拡大しています。現時点でETSの対象となる主な事業者は次のとおりです。

  • 定置施設:発電所や製油所、他の燃料多消費型産業などのエネルギー部門が含まれます。ETSが対象とする排出量の大部分は、これらの施設によるものです。
  • 製造業:セメント、鉄鋼、化学、製紙などのエネルギー集約型産業が含まれます。対象となるのは、これらの産業の生産プロセスにおける排出量です。
  • 航空:急成長する航空部門からの排出量を削減すべく、2012年以降、EU加盟国内を飛行する航空機運航会社と一部の出発便が対象となっています。
  • 海上輸送:2024年1月1日から、EU域内を航行する大型船舶の排出量と、EU域外を航行する大型船舶の排出量の50%がETSの対象となっています。

出典: https://en.wikipedia.org

6. EU ETS排出枠とは何ですか?

In EU排出量取引制度(ETS)における排出枠は、1トンのCO2を排出できる「許可証」に例えることができます。EUの排出枠は最終的に市場安定化リザーブ(Market Stability Reserve)に集約されます。対象となる各企業は、この排出枠を分配または購入で獲得することが義務付けられており、年度末に実際の排出量を賄うだけの排出枠を償却する必要があります。排出枠を超過した場合、多額の罰金が科せられることになります。排出枠の数は限られているうえに、年々減少するため、排出枠内にとどまり、高額な罰金を避けるには、再生可能エネルギーにシフトして排出量を削減していく必要があります。

7. EU ETSには、どのような罰則がありますか?

欧州議会で採択されたEU ETSでは、違反に対して主に排出超過に係る罰金が科されます。排出枠を超えた場合の罰金は、1トンのCO2あたり100ユーロと高額になります。これにより排出枠を超えないよう強い経済的なプレッシャーをかけ、制度の有効性を保つ狙いがあります。企業が期限までに十分な排出枠を確保できなかった場合、罰金は自動的に適用されます。また罰金額は、強制力を維持するためインフレ率に応じて毎年増加しています。違反した場合、将来のオークションからの除外、取引の停止、船会社の場合はEU域内での取引禁止といった措置を取られる危険性もあります。

出典: https://climate.ec.europa.eu